昭和後期から平成において活躍された、日本を代表する歌人の前登志夫さん。前登志夫さんは、峠のまなび舎がある広橋で生まれ、学生時代にこの地を離れるも、30代で広橋に帰郷されました。

奈良、吉野の山の暮らしから生まれた歌や随筆は、この地に住む私に素晴らしい贈り物を授けてくださったと思っています。

前さんの文章には私も知っている場所が多々出てきますので、きっと今私が見ている景色と同じ景色を見ていたのだろうと思うと、その景色の中で前さんが感じたこと、考えたことが私に共鳴してくるような気がします。

Wikipediaによると。。。アニミズム的な宇宙観・生命観を表現した短歌を詠み続けた。歌集のほかに、吉野をテーマとしたエッセイ集も多数執筆した。2005年(平成17年)、日本芸術院会員となる。

とはいえ、短歌については全くの無知ですし、随筆も理解し難いところが多くありますので、もっともっと前さんの世界を味わい、前さんの言葉やものがたりを身体に染み込ませたいと思っています。

ここで前さんの世界に触れたり、吉野や広橋の歴史を知るきっかけとなる場になったら嬉しいです。ソファや椅子などもありますので、気軽に談話室としてもご利用ください。

広橋峠を過ぎる旅人は、バスの窓から思わずほうと小さな声をはなつ。

金剛山から葛城への稜線がじつにゆたかだ。

どっしりと落ち着いているが、その頂は鋭くさわやかだ。

二上山から生駒への山なみがぼうぼうと西の空にけむっている。

北へ目をうつすと、高取山から竜門岳の青垣がつらなって、

大和国原とのさかいをなしている。

こんな広々とした眺望をほしいままにして、この地に住んでいると、

心もおおらかになり、そして長生きもするだろうと人はいう。

毎日、こんなにひろびろとした風景を見て生きていると、

ものごとの視野も広くなり、見通しのきく目でものごとを判断する習慣もできてくる。

そうならなければ風景に申し訳ないような気がする。

「郷土ひろはし誌」より(昭和四十九年)

たくさんの著書があり、どれも装丁が素晴らしいのです。

前さんの短歌に素敵な写真を載せたパネルです。